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お店の扉を開けると、優しい日差しに照らされてこれまで見てきたものとは全く違う漆器たちがキラキラと輝いていました。続いて訪れたのは、丸嘉小坂漆器店。木地制作から塗り、絵付けまで伝統的な漆器作りを行いながら、漆塗りガラス製品の先駆けとして、そのブランド化に力を入れてきました。「ガラスにはない色合いを漆で表現し、漆器にはない透明感をガラスで表現しています」と話すのは、代表取締役の小坂玲央さん。先代が、経済の悪化で仕事がなくなったときに開発した技術で生まれた商品でした。
今は、「漆硝子」と呼んで商品の企画からPR、お客さんに届くまでのすべての工程を自社で行っています。工房での失敗が許されない手作業に、高校生たちは息をのみます。一方、店舗では色鮮やかで輝く漆硝子に触れ「光の加減など、ガラスならではの特徴があってすてき」と栗生さん。
いろんな色があり、自分が好きなアイドルの“推し色”を発見したと喜ぶ高校生たち。高校生目線の木曽漆器の魅力がそこにありました。
飲むときに、中に景色が広がるのがすごく良い!自分の好きな色も発見!
光の屈折を利用したガラスの模様がすごくきれいでおしゃれ!
木曽漆器はまだまだ認知度が低いと感じています。多くの人に認知されていくためにも、職人同士で技術を高め合いながら木曽平沢という産地を盛り上げていきたいと思っています。お客さんの手元に木曽漆器が届いて、その価値に気付いてもらえるということは、職人の価値が高まるということ。職人の価値が高まる連鎖を広めていきたいですね。そんな思いで新たな製品の企画や、デザイナーさんとの取り組みなどに力を入れてきました。現在、木曽漆器業界に入ってきてくれる人が少なく、担い手も減ってきている深刻な状況です。少しでも漆、漆器、木曽漆器に興味を持ってもらって、担い手もしくは伝えていく人が一人でも増えていってほしいです。
1945年創業の丸嘉小坂漆器店の3代目。硝子に漆を塗る技術を開発した先代に続き、「美しく、誠実で、ドキドキさせる漆硝子」をコンセプトにブランド「百色-hyakushiki-」を立ち上げ、木曽漆器の産地で新しい挑戦を続けている。