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御正体(みしょうたい)は、鏡板(きょうばん:神体)に仏像(仏体)を接合した、神仏一体の礼拝仏で、神仏習合の考えによってつくられたものです。社寺の本堂に掛けられて祀られるので「懸仏(かけぼとけ)」とも呼ばれています。そのため、銅造千手観音坐像御正体残闕は「懸仏残闕(かけぼとけざんけつ)」とも呼びます。
この御正体は銅製の十一面観音坐像で、総高18cmです。側面及び背面に枘(ほぞ)と枘穴がみられることから、鏡板・脇手がついた千手観音であったことがわかりますが、鏡板・脇手ともに失われています。
全体的に鋳造仏としては素朴ですが、ずっしりと重く安定感があり、特に童顔の表情がよく、素朴な中に安らぎをたたえています。製作年代は鎌倉後期と推定されます。