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広報塩尻2026年6月号テキスト2ページから3ページがご覧になれます。
本市の特産である木曽漆器は、400年以上の歴史を持つ伝統的工芸品です。その長い歴史の中で培われた技術が、全国の貴重な文化財の修復や復元に活かされています。今回は、本市の漆器職人が携わる「文化財修復事業」についてご紹介します。
問い合わせ 商工課 商工係 直通電話0263-52-0871
広島県の厳島神社、愛知県の名古屋城、東京都の上野東照宮など、全国的に有名な文化財の修復に本市の木曽漆器職人が携わっていることをご存じですか。
長い歴史を持つ木曽漆器ですが、ライフスタイルの変化などに伴い徐々に需要が低迷。そうした中、伝統的な漆塗りの技術を生かした新たな需要の開拓を目指して27年前に始まったのが、文化財修復事業です。
当時、一般的に文化財の修復を特定の専門業者が請け負うことが多い中、木曽平沢の漆器職人による「文化財修復チーム」を結成。座卓などの大型漆器を得意とする職人が多く、施工面積の広い文化財修復にスムーズに対応できたこともあり、全国の産地に先駆け、「産地全体で組織を形成して取り組む」という画期的なスタイルを確立しました。
現在、文化財修復チームには19人の職人が在籍。それぞれが漆器業を営むかたわら、案件ごとに5から6人の体制で、文化財修復工房に持ち込まれた部材の修復作業などを行っています。
産地の先進事例として注目を集めるこの事業は、全国の貴重な歴史的建造物を保存し、次代につなぐという役割のみならず、地域の漆器産業の技術を伝承し、財政基盤を支える重要な役割を担っています。
一般財団法人塩尻・木曽地域地場産業振興センターが受託した、文化財の修復・復元作業を行う工房です。地域の寺社や山車などの修復の相談については、センター(電話0264-34-3888)にお問い合わせください。
■住所 木曽平沢2221
文化財修復を取りまとめる太田さんに、修復作業の概要や、今後の課題などについて聞きました。
地域の漆器産業の振興を担う塩尻・木曽地域地場産業振興センターでは、平成11年から文化財修復事業に取り組んでいます。また、当センターが加盟する一般社団法人社寺建造物美術保存技術協会は国選定技術保存団体であり、令和2年に協会を含む関係する17団体が「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」でユネスコ無形文化遺産に登録されています。
文化財などの建造物に漆を塗るのは、装飾に加え、厚い塗膜で覆うことで部材を保護する役割があります。文化財修復の工程は「下地付け」から始まり、「塗り・乾燥・研ぎ」を何度も繰り返す緻密な作業です。一般的な漆器づくりとおおむね同じですが、決定的に異なるのは建造物であること。扉などの取り外せる部材は文化財修復工房で作業しますが、現地に赴いて作業する必要もあります。また、部材の形状やサイズも毎回違うため、一つの工程にかける時間も圧倒的に多くなり、使い慣れた道具の他に、その都度異なる道具を用意する必要もあります。
これまで、産地として技術を研さん・継承してきましたが、職人の高齢化が進む中、後進の育成は大きな課題です。文化財の修復は一定の周期で行われるため、前回の修復に関わった職人が再び次の作業に加わるサイクルができれば、若手の育成にもつながると考えます。実際に作業して肌で感じることが、何よりも大切な学びになりますから。
これからも修復の技術を継承し、木曽漆器産業の発展と地域の活力につなげていきたいです。
「写真」▲塗装してある箇所の傷を埋める「錆付け」作業の様子
■作業内容 木部の漆塗り・修復、錺(かざり)金具・彫刻彩色の修復
before「写真」 → after「写真」
■場所 塩尻市
■作業内容 建築部材・建具部材の漆塗り、保存修理
■場所 東京都台東区
■作業内容 建築部材・建具部材の漆塗り、金箔押し
■場所 愛知県名古屋市
■作業内容 建築部材・建具部材の漆塗り、蒔絵、金箔押し
初めて修復作業に携わったのは、職人になって間もない時でした。右も左も分からない中での作業で、とにかく必死になって技術を磨くしかなかったですね。文化財修復は、複数人で行うため、他の職人さんから学べることが多くあります。携わることで自分の作品づくりを支える一生の財産になっています。
修復作業に関わるようになった当初、箱根で寺院などの修復に3年携わりました。自分の仕上げたものが後世に残っていくことにやりがいを感じています。後世の人が見ても感動するような物を作っていきたいです。今後は、自分の技術を磨きつつ後進のサポートをしていきたいですね。