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広報塩尻令和6年6月号テキスト版 2ページから5ページ
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特集 今後の人生を家族と話す
リビングウィルを書いてみましょう 「イラスト」
もしも、あなたが急病で倒れたとき、どうしてほしいかを家族や親しい人と共有できていますか。これからの人生を家族らと話し合う「人生会議」を開き、その思いを共有できるリビングウィル(事前指示書)を書くことの大切さをお伝えします。
問い合わせ 介護保険課介護相談係 電話0263-52-0280 内線2133
今後の人生を家族と話し合う機会を持つ
皆さんは自分の最期の希望について家族に伝えていますか。また、家族や親しい人が最期をどう過ごしたいかを知っていますか。あらゆる手段を使って1日でも長く生きたいと思う人もいれば、機械につながれてつらい闘病生活を送らず安らかにその時を迎えたいと思う人もいます。
(グラフ1参照)
誰にでも、事故や病気で自分の意思を伝えることが難しくなる可能性があります。元気で健康な生活を送っている今だからこそ、自分の最期について考え、家族や頼りになる人と話し合う機会を持つことが大切です。自分や家族の最期について前もって考え、人生観、死生観、価値観などを繰り返し話し合い、共有する取り組みを「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」といいます。塩筑医師会と本市では、家族や頼りになる人と思いを共有しておくためのツールとして、「リビングウィル」を作成しました。
■グラフ1「円グラフ」 延命治療の希望の有無
出典:令和4年度「塩尻市高齢者実態調査」
望む・どちらかといえば望む 2.5%
望まない・どちらかといえば望まない 81.9%
無回答・分からない 15.6%
もしもの前の話し合いが大切
リビングウィルは、どんな延命治療を希望するのか、最期をどこで過ごしたいか(グラフ2参照)など、自分の希望を書き記すためのものです。前もってリビングウィルを用意しておくことで、急病など自分の意思を伝えられない状態になっても、希望や思いを書面を通して家族や親しい人に伝えることができます。終末期の治療方針に関して、家族らは難しい選択をその都度迫られ、限られた短い時間で答えを出さなければなりません。そのため、結論を出した後もこの判断で本当によかったのか、本人が望むものだったのかと悩み続ける人もいます。リビングウィルによって家族や医療従事者の心理的な負担を軽減することもできます。
■グラフ2「円グラフ」 人生の最期を迎えたい場所
出典:令和4年度「塩尻市高齢者実態調査」
自宅・親族の家 58.3%
施設(特別養護老人ホーム、ホスピスなど) 8.0%
医療機関 7.8%
その他・無回答・分からない 25.9%
家族や頼りになる人と話し合い、リビングウィルを書いてみる
まずは、リビングウィルの内容に沿って自分の思いや考えを家族らと話し合ってみてくだい。「塩筑医師会・塩尻市版リビングウィル」では、「心肺停止状態になったとき」や「治療をしても回復の見込みがないと判断されたとき」の治療内容などについて、「希望する」「希望しない」「今はわからない」の三つから選択するようになっています。
また、自分の署名欄に加え、自身で判断できなくなったときに医師が相談する代理判断者の署名欄があります。人生会議で自分の思いや考えを伝えた家族や頼りになる人を代理判断者とし、自分に代わって延命治療の考えや希望を医師などに伝え、その思いを理解した上で医師と治療方針を決めることが期待できます。
事前に医師と延命治療の方針を共有し、医師が治療の際にあなたの思いを尊重することや搬送先の病院の医師との連携に役立つよう、かかりつけ医の署名欄もあります。医師が確認することで、誤った医学的な知識による選択を防ぐ効果もあります。
リビングウィルはどこでもらえるの?
配布場所は次のとおりです。
○市内医療機関(一部を除く)
○市内歯科医院
○市内薬局
○地域包括支援センター
○市保健福祉センター1階介護保険課
リビングウィル以外にも思いを共有できる物はあるの?
本市ではエンディングノートも配布しています。エンディングノートは、自分の人生の振り返りやこれからどのように生きたいか、大切な人へのメッセージや葬儀についてなど、最期のことに限らず家族らに伝えておきたいことなど幅広く書いておくことができます。介護保険課、各支所、地域包括支援センターなどで配布しています。
「写真」
リビングウィルの書き方「イラスト」
「写真」(1)自分の延命治療について考える
リビングウィルの延命治療の項目やことばの解説を読み、自分の延命治療などの希望について書いてみましょう。
「写真」(2)「人生会議」を開き、自分の考えや希望を共有する
家族や親しい人、頼りになる人らと「人生会議」を開き、自分の考えや希望を伝え、その思いを共有しましょう。
「写真」(3)リビングウィルに自分と代理判断者が署名する
家族らと自分の希望や考えが共有できたら、リビングウィルに署名し、代理判断者を決めてその人にも署名してもらいます。
「写真」(4)かかりつけ医に署名してもらう
かかりつけ医と一緒にリビングウィルを確認後、かかりつけ医に署名をしてもらいます。医師は、コピーしたものをカルテと一緒に保管します。
自分で保管する時のワンポイント「イラスト」
家族や救急隊員などが見つけやすいよう冷蔵庫に貼り、携帯版はお薬手帳に挟んで持ち歩くことをお勧めしています。リビングウィルの内容を共有した人にコピーを渡すか、保管場所を伝えておくことも大切です。
もしものときの自分の希望を家族と共有する 塩筑医師会 副会長 椎名 裕之さん(しいな医院)「写真」
「塩筑医師会・塩尻市版リビングウィル」の制作の中心となった塩筑医師会の椎名裕之副会長に、リビングウィルを書くときのポイントなどについて聞きました。
Q家族らと今後の人生を話し合うのは、いつが良いのでしょうか?
A 今後の人生について話し合うタイミングはいつからでも良いと思っています。平穏に生活していれば、自分や家族が亡くなった時のことなどを考えたくない人もいると思いますが、最期の時は誰にでも訪れます。元気でいる今だからこそ、自分の人生観や死生観などを考え、家族らと共有しておくことがとても大切です。
Qリビングウィルを作っておくと良い点を教えてください。
A 救急の場面で、家族は、少ない情報や短い時間で治療方針の選択を迫られます。治療を尽くしても救命できなかったとしたら、「自分の判断は本当に良かったのか」と家族が後悔することがあるかもしれません。このような場合でも、リビングウィルがあると、家族らは本人の希望に沿って決められるので、決断をした家族らの心理的な負担の軽減につながります。
Q人生会議の注意点はありますか?
A 1回の人生会議ですべてを決める必要はなく、何回も話し合い、本人と家族が納得できるものを作ってください。リビングウィルは、事故や病気で自分の意思を伝えられない場合や、がんの終末期など治る見込みがないと判断された時を想定して記録しておくものですが、法的な拘束力はありません。
救命できる可能性があれば、医療従事者は懸命に治療を行います。患者さんの環境や病状によって治療方針も変わるので、その時に最善と思われる治療方針を選択することもあります。
Q近親者がいない場合、誰と人生会議を行えば良いでしょうか?
A 治療を受けている病院の主治医、ケアマネジャーやケースワーカーなど専門的な知識を持つ人に相談することが良いと思います。介護施設を利用している場合は、その施設の職員など頼りになる人を普段からつくっておくと、近親者がいない場合でも話し合うことができます。
Qかかりつけ医がいない場合、誰に署名をもらえばよいでしょうか?
A リビングウィルに法的拘束力はないので、かかりつけ医がいない場合は、無理に医師から署名をもらう必要はありません。
ただし、かかりつけ医がいない場合は、市で行っている健診などを受け、受診をきっかけにかかりつけ医をつくるよう心掛けてください。
Q最後に、リビングウィルを書く上で大切な点を教えてください。
A まず、自分の意思を明確にしてください。家族の意見に流されず自分の意思で考えましょう。次に、家族と自分の意思を共有しましょう。緊急時に家族間で意見の対立が起きないよう、家族の意思を統一しておくと良いです。そして、終末期の医療について、自分の身に起こることを、自分も家族も知っておくことが大切です。
これらの点を意識して書きましょう。
突然やってくる「もしも」のために
リビングウィルの活用と心疾患への備え
本市では、終末期についての講演会を毎年開催しています。今回は、リビングウィルの重要性、延命治療の概要や注意点などと併せて、高齢者に多い心疾患に対して重症化しない対策を医師の視点からお話していただきます。「イラスト」
■日時 7月17日水曜日 午後2時から3時
■場所 市保健福祉センター3階 市民交流室
■講師 椎名 裕之さん(塩筑医師会副会長)
■定員 50人(先着順)
■参加費 無料
■申し込み方法 電話または右のコード(電子申請)でお申し込みください。「QRコード」
■申込締め切り日 6月28日金曜日
思い出話も「もしも」の時の参考になる 複合施設ハートフルはうす 大沢 友見さん「写真」
施設を利用する家族と共に終末期に向き合う、訪問看護師にお話を聞きました。
訪問看護の仕事上、治療をしても回復が難しい人がいるご家族から、終末期について相談を受けることがあります。
終末期について考え、話し合う時にとても重要なことは、支援者側が聞きたいことだけを聞くのでなく、本人を主として考え、本人がどうしてほしいのか話を聞くことだと思います。周りの状況が変われば考え方も変わるので、一度で終わらせず何度でも話し合うことも大切です。
今後の人生を家族と話し合うきっかけの一つが、リビングウィルだと思います。この冊子をきっかけに普段から家族と話し、考えを共有してください。話し合う中で思い出話になることもあります。その思い出からどんなことを思い、考えたかを聞くと本人の考え方を知ることもでき、もしものときの参考になると思います。
リビングウィルは本人だけのものではなく、本人を思う家族のものでもあると思います。
「写真」本人を交えて、大沢さんやケアマネジャーと話をするご家族