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広報しおじり令和4年5月号テキスト版 2ページから5ページ

ページID:0022144 更新日:2022年4月26日更新 印刷ページ表示

広報しおじり2022年5月号テキスト版2ページから5ページがご覧になれます。

特集 短歌が人をつなぐ

短歌のふるさとに生きる赤彦の精神

 塩尻はかつて多くの歌人が集った「近代短歌のふるさと」です。今回は、塩尻の短歌に影響を与えた島木赤彦に光を当て、過去から今、そして未来につながる塩尻の短歌についてお伝えします。
問い合わせ 塩尻短歌館 電話0263-53-7171

「写真」歌人 島木 赤彦(明治9年から大正15年)

 諏訪郡上諏訪村(現諏訪市)出身、本名久保田俊彦。明治27年長野師範学校(現信州大学教育学部)に入り、この頃から万葉集の研究をしたり、新しい歌風を詠み始めたりした。長野師範学校を卒業後、北安曇郡池田会染小学校や諏訪郡玉川小学校で教師となり、同時に短歌づくりも盛んに行った。明治42年には、広丘小学校に校長として赴任し、街道沿いの太田家、通称「牛屋」に下宿し、多くの人と交流。2年間という短い期間だったが、赤彦自身の歌人としての基礎が作られたといっても過言ではない。
 赤彦の短歌の特徴は「寂寥(せきりょう)感」(さびしさ・わびしさ)にあるといわれている。短歌づくりを「鍛錬道」として、三十一文字の短歌を磨き上げていくように作った。

「近代短歌のふるさと」塩尻

 塩尻は、明治・大正期に太田水穂や若山喜志子など多くの歌人を輩出し、「近代短歌のふるさと」といわれています。歌人たちは短歌に生涯を懸け、自然豊かなこの地に集い、共に感性を磨き合いながら創作活動を展開し、優れた作品を数多く生み出しました。
 近代短歌の一派を担った島木赤彦も、短歌と教育を通じて塩尻と深く関わった一人です。

塩尻に根付いた赤彦の教え

 赤彦と塩尻の関わりは、明治42年、赤彦が広丘小学校長として赴任した時から始まります。赤彦は当初広丘の土地になじめず、広丘村民にもあまり知られていませんでした。しかし、広丘小学校児童の個性を伸ばすための授業改革や、新しい校訓の制定などにより、子どもたちの人格形成に尽力。また、下宿先「牛屋」に村の青年や若い教師たちを招き、古典や短歌についての勉強会を開いたことで、赤彦の人柄が次第に理解されるようになりました。さらに、赤彦と交流することで村内にも短歌を愛好する人が増え、赤彦の教えは地域に根付いていきました。
 赤彦が広丘を去った後も、その教えは地域の住民に受け継がれていきました。戦後には、広丘に元気と誇りを取り戻す動きとして、ふるさとにゆかりのある偉大な歌人の歌碑が建ち始め、昭和26年に赤彦歌碑が建てられました。赤彦が広丘にいた約2年という短い赴任期間が、後世の多くの人々に短歌の文化を浸透させました。

「写真」歌碑には表紙で紹介した赤彦の短歌が刻まれています。柿の村人とは赤彦の筆名です。

受け継がれる短歌の文化

 その後も塩尻では、短歌の里にふさわしいまちづくりを進めています。
 昭和50年には、本市にゆかりのある女流歌人の歌碑が建ち、平成4年に短歌館が開館しました。また、毎年全国短歌フォーラムin塩尻を開催するなど、塩尻から短歌の文化を全国に発信しています。
 今も地域に根付く、短歌を愛する心。短歌に魅了された人々が、短歌づくりの文化を受け継いでいます。

水穂と赤彦

歌人 太田 水穂(明治9年から昭和30年)「写真」

 広丘村(現広丘原新田区)出身で、島木赤彦とは長野師範学校時代の同級生。当時から交流があった2人は互いに切磋琢磨し、短歌の道を極めていく。
 赤彦が広丘小学校長になった頃、水穂は東京で歌人・研究者の道を歩み始め、大正4年には短歌誌「潮音」を創刊。赤彦も水穂も、歌人として活躍しながら塩尻の人々に短歌の魅力を伝え、「短歌のふるさと塩尻」の中心人物として、地域の文化に大きな影響を及ぼした。

島木赤彦寓居「牛屋」の公開が始まりました「写真」

 島木赤彦寓居は、建物を所有していた太田家の屋号にちなみ、「牛屋」と呼ばれており、現在国の登録有形文化財に登録されています。元々は善光寺街道沿いにありましたが、本市に寄贈され、3月に塩尻短歌館横の歌碑公園に移築されました。4月から一般公開も始まっています。

  • 公開時間 午前9時から午後4時半
  • 受け付け 塩尻短歌館
  • 入館料 300円(中学生以下は無料。短歌館にも入館可)
  • 休館日 月曜日、祝日の翌日

短歌に触れて、表す。

 島木赤彦が残した教えや短歌の文化は、今もなお塩尻の地に残されています。赤彦の教えを受け継ぐ、広丘小学校の短歌の取り組みを紹介します。
「写真」詠んだ短歌についてみんなで評価し合う様子

日常生活に溶け込む短歌

 広丘小学校では、1年生から短歌を作る学習が始まり、高学年では広丘の短歌の歴史を学ぶなど、6年間を通して深く短歌に触れ、日常生活の中で身近なものとなっています。
 中でも特徴的なものが、新学期に配布される、短歌を書き溜めていく短歌帳です。児童たちは授業や宿題で出題されたテーマに沿って、自分が感じたことを歌にして、短歌帳などにしたためています。子どもたちが詠んだ歌は、感情の一瞬一瞬を捉え、その時感じた素直な気持ちを三十一文字で表していて、表現力や健やかな心が育まれています。

楽しみながら短歌を作る

 コロナ禍以前は、毎年秋に開催されていた「全国短歌フォーラムin塩尻」に合わせて、「校内短歌フォーラム」を開催していました。校内で投稿歌を募集し、塩尻短歌館の指導員や地域の短歌愛好者が選考・歌評を行い、優秀作品は全校児童の前で表彰されます。
 この2年間は、新型コロナウイルス感染症の影響で開催できませんでした。しかし、このフォーラムに代わり、小学校独自で「短歌の日」を作り、短歌の学習を進めています。「短歌の日」は塩尻短歌館の指導員を講師として招き、楽しみながら短歌づくりの基礎を学びます。より深く感じながら歌を作成できるため、普段の授業よりも自由で面白い短歌が生まれます。

赤彦の教えを未来へ

 広丘小学校の学校教育目標「正しく強く美しく」は、新校訓「奨善会(しょうぜんかい)」冒頭の「我らが、学校に学ぶは正しく強く美しき心を得んがためなり」から生まれ、今でも子どもたちの生活の基本となっています。また、児童会のことを奨善会と呼び、赤彦が制定した「自ら進んで良いことをする」教えをもとに活動しています。
 赤彦が残した精神や短歌づくりの心は、100年以上経ってもその光は失われず、子どもたちに引き継がれています。
「写真」新学期が始まり、1年間の抱負を短歌にしたため、廊下に掲示しています。
「写真」全校児童の短歌を年度ごと歌集にして、大切に保存しています。

Interview 短歌で思い出を残す

奨善会短歌委員会「写真」【右側から】
村口 二優(にゆう)さん(堅石)
増澤 瑠心(るな)さん(原新田)
小室 恵士(けいじ)さん(野村)
 短歌委員会では、2カ月ごとテーマを決め、昇降口に設置した短歌ポストで全校児童から短歌を募ります。約600首の中から、委員が気に入った作品に印をつけながら掲示しています。「写真」
 短歌を作ることは難しいです。しかし、出来た時には達成感があり、今では、作文を作るより抵抗なく短歌づくりに取り組めます。
 「思い出を短歌で形にできる」ことが短歌の良いところだと思うので、これからも作り続けていきたいです。

第36回全国短歌フォーラム in 塩尻

問い合わせ 社会教育スポーツ課社会教育係 直通電話0263-52-0903
 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、会場での大会は行いませんが、投稿歌の募集・選考などは行います。
 皆さんからの投稿を心よりお待ちしています。

題詠のテーマ

 「電話」

投稿数

 自由題1首、題詠歌1首の合計2首

投稿方法

投稿用紙を郵送:募集要項をご希望の人は事務局までご連絡ください。
インターネットから投稿:短歌フォーラムホームページ内の投稿フォーム(URL https://tanka.shiojiri.com/entry/)からご投稿ください。「QRコード」

投稿料

1,000円(1首でも2首でも同額)

お支払い方法(次のいずれか)

ゆうちょ銀行、郵便局の「払込取扱票」でのお振込み
【加入者名】全国短歌フォーラム実行委員会
【口座記号番号】00560-6-83649
ゆうちょ銀行の「定額小為替」を作品に同封して郵送

投稿締め切り日

6月17日金曜日

短歌フォーラム事業について意見を募集

 地域文化である短歌を中心とした事業について、皆さんのニーズを反映させていくことを目的としています。
■回答方法 次のコードまたは短歌フォーラムホームページからご回答ください。「QRコード」
■回答締め切り日 6月17日金曜日

短歌の里ふるさとを後世に残す

塩尻短歌館長 勝野 雅文「写真」

 塩尻短歌館が開館して30年。この間、地元の原新田区をはじめ、短歌館協力会や市民の皆さんに支えられて今日を迎えることができました。明治元年に建てられ154歳となる古民家を保存するため、この地にゆかりのある歌人たちが築いた文化を継承する場として、また、全国的にも珍しい短歌の博物館として、短歌館は大切な役割を果たしています。
 今年3月には、元広丘小学校長の島木赤彦が暮らしていた島木赤彦寓居「牛屋」が歌碑公園に移築されました。著名な講師を招いて行う塩尻短歌大学や、広丘夏まつり灯籠短歌大会に向けた短歌の募集、競技かるたの入口となる百人一首入門講座、短歌館を会場として行うコンサートなど、さまざまな催しを行いながら短歌の学習や普及活動を行っています。
 これからも「短歌のふるさと」の象徴としての役割を果たしていきたいと思います。市民の皆さんにはお気軽に短歌館に足を運んでいただければ幸いです。