ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 分類でさがす > 楽しむ・学ぶ > 博物館・資料館など > 自然博物館 > 塩尻市でも拡大しているマツ枯れ病

本文

塩尻市でも拡大しているマツ枯れ病

ページID:0046684 更新日:2024年10月1日更新 印刷ページ表示

塩尻市でも拡大しているマツ枯れ病

1. 何が原因なの?

 マツを直接枯らしているのはマツノザイセンチュウ(体長1mm)という線虫ですが、それを体内に入れて運んでいる媒介者はマツノマダラカミキリ(体長18~28mm)です。
 マツ枯れ病と呼ばれている「マツ材線虫病」が、日本で最初に見つかったのは明治38年(1905)の長崎のことで、前年に北米から船でマツ材が輸入され、それにカミキリが付着していたものと現在ではDNA分析から判明しています。
 しかし、当時はマツが枯れる現象がどうして起こるのか分からず、昭和44年(1969)に国立試験場の研究者がマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの絶妙な関係による伝染病であることを突き止めるまでに、64年間で西日本に被害地が拡大してしまいました。

マツノマダラカミキリ(メス)
​マツノマダラカミキリ(メス)
マツノザイセンチュウ(茅野市提供)
マツノザイセンチュウ(茅野市提供)

2. どうして防除や駆除できないの? 

 気温が13℃以下の地域ではマツノマダラカミキリは生息できないため、長年温暖な地域で繁殖していた虫ですが、年々温暖化が進み近年では長野県の高冷地や東北地方の青森県までも被害地が広がってきています。安曇野市、松本市から塩尻市へと南下してきた被害地は、現在は岡谷市、辰野町方面へと広がりつつあります。
 マツノザイセンチュウはカミキリの体内や枯損木の中でしか生きられないため、自分だけで移動して被害を増加させることはできません。被害木の伐倒処理、農薬の散布、健全木への薬剤注入、抵抗性マツの植栽などにより一定の効果を得ることはできますが、広範囲に拡大した被害地ではマツノマダラカミキリの増殖数が多すぎて、完全に対処することはできません。ある研究では、被害木を1本放置しておくと翌年には周辺のマツが 8.6 本枯れるという結果があり、防除の困難性が示されています。
 また、マツの仲間ではアカマツの他に、クロマツ、ゴヨウマツ、シロマツ、ハイマツなども感染すると枯れることが知られています。
 有名な寺社や観光地では、大切なマツを守るために薬剤を利用して防除しているところもありますが、羽衣の松、南禅寺の松、嵐山の松などすでに枯れてしまった貴重なマツもあるのが現状です。

3. これからの地球…

 身近な森林のアカマツが枯れていく状況を見ると、健全な環境を維持することはなかなか難しいことが分かります。近年では、ヨーロッパでもマツが枯れていく地域が拡大して、北米からのマツ材を輸入禁止する貿易問題にまでなっています。
 オオクチバス、マングース、セイタカアワダチソウ、アレチウリなどの例から見ても、人間の経済活動により環境が攪乱されてしまい、解決するのが難しい問題にまで発展することが理解できます。
 エネルギーや資源の問題と同様に、環境汚染・地球温暖化などの課題を解決するためにも、私たちは日常生活の中で過去の失敗から学び、未来のために正しく考えていく姿勢が大切になるでしょう。